何がお金になるか分からない。
今も昔も多くのベンチャー企業が現れては消え、しのぎを削っている。

とりわけ「保険」のビジネスモデルを考えた人は天才のそれだろう。
保険が食い扶持にしているのは、将来への「不安」である。

「死亡保険」
「がん保険」
「入院保険」
例を挙げれば枚挙にいとまがない。

「将来起こるかも?そうなったら不安だな。そのために予防線を張っておこう」
という人間の心理を上手く利用している。

今後も人間の不安が無くなることがない。
将来何が起こるかなんて、神様でなければ誰もわからない。
明日には、交通事故に遭うかもしれないし、病気にかかるかもしれない。
そういう意味で、「保険」のビジネスモデルは良くできている。


さて、最近テレビCMやウェブ広告では、「転職」関連のものが多い。

「自分の価値は、今の会社に見合っているのか?」
「転職で人生が変わるかもしれない」
「将来を見据えてキャリア選択できているか?」

有名俳優や耳に残る音楽を用い、我々に訴えかけてくる。
一見、「転職」も「保険」と同じように、将来の「不安」を対象にしているように思える。

私は逆だと考えている。
確かにそういった一面も当然あるだろう。

だが、「転職」が食い扶持にしているのは、過去の「後悔」ではないだろうか?

多くの人は、就職活動を行い、今の会社に採用されたことだろう。
そして、第一志望の会社若しくは業界に勤めることができている人は、決して多くはないのではないか。
大多数は妥協し、今の会社に勤めているのではないだろうか。

人間、過去の失敗は結構覚えているものだ。
学生時代のトラウマを未だ夢に見るし、思い出してはモヤモヤしてしまう。
できるなら、過去に戻ってやり直したい。
それは当然の欲求だろう。

「転職」が狙っているのはそこである。
昔は駄目だったが、今ならば、当時切望していた企業、業界に行けるのではないか。

過去への「後悔」を「払拭」若しくは「慰めます」というサービスである。

「転職」が成功すれば、素晴らしいことだ。
そして、仮に失敗しても、「やっぱり駄目だった」と「納得」もできる。
これは確かに流行るわけである。


「転職しましょう」
「今の職場では成長できない」

メディアを通し大々的に言われている会社は、悔しくはないのか。
「転職」が廃れるのは、自分の職場が働き甲斐のある職場となり、そこで働き続けたいと思える職場が増えた時だろう。
(そんな時が来るとは今は思えないし、また、転職先もそうである保証は何処にもない訳だが。)