皆さんは「挑戦」しているだろうか?

若い頃は、常に「挑戦」の連続だった。
特別な人生を歩んできた訳ではない。
それでも、人生の節目節目には「挑戦」があった。

部活の公式戦。ここで負けたら、引退の掛かった試合。
受験。志望校に落ちたら、人生が終わる試験。
(人生が終わるは言い過ぎだと思うかもしれないが、当時はそれくらいの気持ちであった)
就活。内定が貰えなければ、これもまた人生が終わる面接。

それ以外にも、否が応でも「挑戦」の機会はやってきて、その度に緊張感と戦ってきた。

何かに「挑戦」する前の独特の緊張感。
始まる前の指の震え。
心臓が「ここにある」とはっきり分かる感覚。

当時は、楽しめるメンタルを持ち合わせていなかったが、今思えば貴重な体験だと思う。


今はどうだろうか?

大人になると、「現状維持」が優先事項になった。

今まで積み上げた「挑戦」の上に自分がある。
少しの衝撃で崩れてしまうかもしれない。
何かに「挑戦」しようとすれば、足元が気になる。

「一歩踏み出した途端、今まで積み上げたものが瓦解しないだろうか?」
「仮に失敗した時、今の立場に戻れるだろうか?」

「挑戦」するには、「賢くなり過ぎた」

「全てを投げ捨てて進め!」
「今踏み出せば全てが変わる!」
「失敗を恐れず前だけを向いて進め!」

無責任な歌詞のように行動はできない。

「挑戦」の結果、何かを成し遂げた人は称賛される。
だが、その影には無数の後悔が存在している。


私が大学生の頃の話だ。
警備員のバイトをしていた事がある。
深夜の交通誘導員で、歩行者の誘導や片側交互通行(通称カタコウ)をやっていた。

バイトをしている人達は、おじさんばかりだった。
話が合わないので、誰かと話すことはあまりなかった。

ただ、一人のおじさんと現場が重なる事が多々あり、暇な時は雑談するくらいの仲になった。

「おじさんは何でこのバイトやってるんですか?」

基本的にそういった話は、NGである。
別にそういうルールがある訳ではない。
ただ周りを見ると、明らかに何かを抱えているのが雰囲気で分かる。
給料の一部前借りが制度として可能だ。

つまり、お金に困っている人が多いのだ。

「昔事業に失敗して、借金があるもんでよ。今はこんな仕事しかできないんだよ」
欠けた歯と真っ黒な口を覗かせながら、照れ臭そうに言った。
「そうなんすね」
俺はそれしか言えなかった。


別におじさんを非難したい訳ではない。
「挑戦」した結果、成功していれば、あそこにはいなかったかもしれない、それは分からない。

仮にまだ若い人がこの記事を読んでいて、「挑戦」しようか迷っているなら、行動して欲しい。
手遅れになってしまう前に。